例えば、海外の人から「日本の気候について教えて」と聞かれたら、何と答えればいいでしょうか?
ある国や地域の気候を説明するときに3つの視点があります。
それが「気温」、「降水量」、「風」です。これを「気候の3要素」といいます。
この3つの要素について、理解することができれば概ねある地域の気候を説明できると言ってもよいでしょう。
こちらの記事では、3つの要素についてのポイントを順番に紹介していきたいと思っています。
どうぞお楽しみください。
(1)気温について
「赤道の近くは暑い、北極や南極に近づくにつれて寒くなっていく」
こんなイメージを持っている人も多いかと思います。
しかし、世界の最高気温を記録した都市はアメリカのデスバレー(56.7℃)で赤道直下ではありません。
日本で考えてみても、日本記録を持っている都市は埼玉県の熊谷市と静岡県の浜松市でいずれも41.1℃を観測しました。赤道に近ければ暑いとするならば、なぜ沖縄が一番暑くならないのでしょうか。
これから3つの気温の法則を学びつつ、世界の各地域の気温について考えてみましょう。
法則その①:風と海流の影響で暑くなったり寒くなったりする。
同じ緯度帯にあっても、必ずしも同じ気温になるとは限りません。
ある地域は北風が、またある地域では南風が吹いていたら気温は変わりますよね。また、近くに暖流か寒流が流れているのかも関係します。
暖流は赤道から高緯度地方へ流れる潮の流れですので、暖かくなりますし、
寒流は高緯度地方から赤道へ流れる潮の流れですので、冷たくなります。
これまでの地理の授業やテストで、こんな問題に出会ったことはありませんか?
Q.ヨーロッパの国々において、冬の気温が緯度に比べて温暖である理由を答えなさい。
A.暖流の北大西洋海流と偏西風の影響を受けるから。
暖流の影響で海水温が緯度の割に暖かく、その海からの暖気を偏西風が内陸のほうまで運んできてくれるわけです。ユーラシア大陸の東西を比べると、西側は偏西風の影響で西風、東側は季節風の影響を受けて夏と冬の寒暖差が大きくなることを押さえておきましょう。
法則その②:海からの距離によって気温の上がり方と下がり方が変わる。
同じ緯度帯においても、沿岸部にある都市と内陸部にある都市では気温が異なります。非常に雑な言い方をしますと、地球には「大陸」と「海」しかありません。
大陸を言い換えると岩石、海を言い換えると水としましょう。
ここで、こんな場面を想像してみてください。
猛暑が続く夏休み。あなたは海水浴にやって来ました。
砂浜は鉄板焼きのように激アツで、裸足では歩けないほど。
しかし、海の中はどうでしょうか。
すこしひんやりするくらいに涼しくなっているはずです。
太陽は砂浜にも、海にも同じだけのエネルギーを注いだはずなのに、不思議ですよね。比熱という考え方があります。物質1gを1℃上昇させるための熱量のことです。岩石は熱しやすく冷めやすく、水は熱しにくく冷めにくいのです。
そのため、たとえばユーラシア大陸などの内陸部、海からずーっと離れた地域では、夏には気温があがりやすく(めちゃ暑い)、冬には気温が下がりやすい(めちゃ寒い)のに対して、海から近い地域は、水に囲まれている影響で1年を通して気温が変化が小さいと言えるのです。
このような話をすると、日本はどうなんだ。島国だけど、夏は暑くて冬は寒いじゃないか。四季がはっきりしていることをどう説明してくれるのだ、と思われるかもしれませんが、これは法則①の風向きを考慮すれば説明がつきます。
日本は夏は小笠原諸島のほうから南東のモンスーン(小笠原気団)が、冬はシベリアのほうから北西のモンスーン(シベリア気団)が吹くことが影響しているのです。
このように同じ条件の中でも、法則を組み合わせていきながら考えていく作業が面白いところなんですね。
法則その③:標高が高くなると、気温が低くなる。
富士山のふもとと山頂では、どちらが気温が寒いでしょうか。
山登りをすると気温が下がっていくことは、皆さん実感できることだと思います。
実は標高が100m上昇するたびに、気温は0.55℃〜0.65℃の割合で低下していくと言うものです。
これを気温の逓減率といいます。
同じ緯度帯にあっても、標高が高いと涼しくなるということです。
100m程度だったらそれほど変わらないですが、1000mだと5.5℃、2000mだと11℃、エベレストは8848mですので約9000mとすると、50℃近く低下するわけですね。
下の図を見てみましょう。
これは北緯50度付近に位置する様々な都市の夏と冬の気温を比べたものです。
このうち、ユーラシア大陸の西に位置するロンドンと、東に位置するハバロフスクを比較してみましょう。ロンドンもハバロフスクも夏の気温はほぼ同じですが、冬の気温を見るとロンドンがおよそ10℃なのに対して、ハバロフスクは−20℃近くになっていることが読み取れます。
これは法則①が特に影響しています。
ヨーロッパの沿岸には北大西洋海流(暖流)が流れていて、偏西風が暖気を運んでくるために冬でも緯度の割に温かくなります。一方で暖気を含んだ偏西風はハバロフスクまでは届きません。
特に東経60度付近を走るウラル山脈にぶつかることで弱まると言われています。
代わりに吹くのが季節風です。
冬は大陸から北西モンスーンが吹きます。世界の寒極と呼ばれるシベリア、特に人間が住むところ(エクメーネといいますね)において、世界最低気温を観測したオイミャコンのあたりから冷たい風が吹くため、凍えるような寒さになるわけです。
まとめ
赤道の近くは暑い。確かにその通りですが、それ以外にも3つの法則を知ることで、地球上の様々な地域における気温の様子について理解しやすくなることがお伝えできたかと思います。一言で気温と言っても、1年、あるいは1日を通しての気温の変化の大小についても注目できるようになるとより地理的な見方ができるのではないでしょうか。
次回は降水量です。なぜ雨が降る場所と、降らない場所があるのか、そのメカニズムについて学んでいきましょう。
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